宝塚歌劇団と言えばベルサイユのばら、ベルサイユのばらの登場人物と言えばオスカル。
人物造形だけでなく衣装も含め、際立った存在感がある。
女性が男性を演ずる宝塚歌劇団においてオスカルは描きやすいキャラクターかもしれない。
作り手にとっては。
一方、演じ手にとっては難しいのではないだろうか?
男役の方々は日常生活とは異なる発声を訓練し、男性の所作や仕草を研究、昇華し演じることが仕事のようなものだ。
オスカルは男装の麗人ではあっても男性ではなく、男役がキャスティングされがちな「ミーアンドマイガール」のジャッキーのように女装の女性でもない。
今回のオスカル役は朝美絢さん。
普段、男性を演じられているときより台詞のピッチが心持ち高く聞こえ、かと言って女性の日常会話のそれでもない絶妙な表現で唸ってしまった。
男役の方でも声質は様々で個性が違う。
キャリアが長くなるにつれ重厚さが加わるイメージだ。
朝美さんはそこまでずっしりとした印象はなく、鮪に例えるならば中トロで適度に乗った脂が甘く広がる魅力的な声の持ち主だと感じている。
本公演ではさらに脂の抜けた、極上のとろける赤身のような声だった。
その一点のみにおいてオスカルを制したと言っても過言ではないと思う。
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