宝塚歌劇の舞台を見て感じたことを新鮮なうちに記している性質上、どうしても退団後は出番が少なくなってしまうので彩風咲奈さんのことを。
私が過去に観劇した公演の映像をあまり見ないのは、記憶の中に美しいまましまっておきたいのかもしれない。
特に男役さんが男役さんでいられるのは在団時だけの特権だから。
「ベルサイユのばら」を見るごとに、彩風咲奈さんはなんて「白」の似合う方なんだろうと思う。
衣装が白いのは寧ろオスカルが印象的なのだが、彩風さんは存在が「白」そのものなのだ。
色は抜いていくと最後は「白」になる。
反対に塗り重ねた果てが「黒」だ。
絵が天才的に下手だった私が画用紙を真っ黒にして困り果ててしまい、見かねた担任の先生が「いちど洗いましょう」とまっさらな何もない状態に戻してくれたことがある。
新しい画用紙に取り替えるのでなく、あえて目の前で水で洗い流したのはその先生の教えだったのかもしれない。
彩風さんの無駄をそぎ落とした凛々しい姿を見ていると、あのときの清々とした感覚が蘇り心まで洗われる気持ちになる。
足すことより引くことが大切で難しいのは芸事に限ったことではない。
習得した経験や知識を捨てるのは相応の勇気と決断力が必要だ。
男役として研ぎ澄まされた真っ白な彩風さんを脳裏に焼き付けるべく今週末も劇場へ向かう。
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