観劇譚、続き。
月組公演「BLUFF」で彩海せらさん演じるロジャーは“ギャンブラーを夢見る青年(作品紹介より)”。
風間柚乃さんのドノヴァンは“天才詐欺師(同上)”なのでコントラストとして描かれているのは予想していた。
先の大劇場公演「Eternal Voice 消え残る想い」では怪しい呪術師で毛色の変わった印象を受けた彩海さん、今作のロジャーのような半人前だけれども無垢で放っておけない気の良いお兄ちゃんを演じたら今の宝塚歌劇団で一二を争うくらい巧いと思う。
半人前なのでよく失敗するし、そのせいで殴られて美しい顔に傷がついたり散々な目に遭っても、最後は善の特権とばかりにとびっきり弾けた笑顔の印象を残して幕が下りる。
そして再び幕は上がりショータイム。
がらりと表情が変わり艶のある大人の目をした彩海さんがいる。
今作の設定は1950年代のアメリカでマフィアが絡むとなれば衣装はもちろんスーツだ。
ダンスの一挙手一投足が拳銃となり的確に観客を撃ち抜いてゆく。
つい先日まで子供の面影が残る学生だった親戚がネクタイを締めて革靴で玄関に現れると「立派になって」など言われたりする様が数分も置かずに目の前で起きるようなもので見惚れてしまうのも当然ではないか。
どちらも本当でどちらも嘘。
彩海さんのはったりにまんまと騙されて幸せだった。
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