礼真琴さんはとことん大きかった

もしかして、ベルサイユのばら 宝塚歌劇団星組

高身長は宝塚の男役にとって強い武器だ。

礼真琴さんは現時点でのトップスターの中で最も小柄で、全体を見渡しても背の高い方ではないと思う。

私がこれまでに見た礼さんの役は社会や身分の差など大きな敵に立ち向かう姿の印象が強い。

敵方にアクの強い輝咲玲央さんが配置されたりし、苦難を乗り越えて弱者が強者を倒す物語のカタルシスを作り手がうまく演出していると感じている。

少し前に観劇した東急シアターオーブ公演「BIG FISH」はそのイメージとは程遠い作品だった。

劇的な展開があるわけではなく、現実と非現実のはざまを行ったり来たりしながら、何が本当で何が嘘か分からないまま物語は進んで行く。

存在しえない巨人が出てきたり、原作を知らない私は「何だか宝塚っぽくないな」と思いながら狐につままれたような面持ちで客席に座っていた。

宝塚歌劇は女性がすべての役を演じる点で、すでに現実世界とはかけ離れている。

ゆえに行き過ぎた突拍子のないシュールは意図してか意図せずしてか見かけない。

そんな空間を一瞬にして宝塚歌劇の世界に変えたのが礼真琴さんの歌だ。

豊かな表現力は今さら私が言うまでもないが、今作ではエドワード・ブルームという役柄そのものの温かな声で2,000席を抱きしめていた。

礼さんが歌うたび、虚実ないまぜの世界があたかも現実に起きている錯覚に陥り、気づけば見ているこちらまですっかり騙されていた。

幕が下り心地よい虚構の余韻に浸りながら、礼真琴さんの器の大きさに感服した。

間もなく始まる次回大劇場公演「記憶にございません」は政界コメディ。

また新たな一面で魅了してくれるはずだ。

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